6. 個人的であること

村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチは良かったと思う。僕は、今年(09年)の1月27日に記事を書いて以来「この作家の言うことを真剣に考えてみようよ」ということを主に言ってきたのだけど、スピーチをきっかけにそう思う人が増えたのではないかと思う。ただ…

速報、村上春樹スピーチ、オフィシャル版リリース

イスラエルの新聞、ハーレツ紙に村上春樹のエルサレム賞受賞演説の全文が出ました。Always on the side of egg :by haruki murakami署名入りですので、これがオリジナルという扱いになると思います。これで、どのソースで何が含まれる、というような問題は全…

村上春樹受賞演説のオリジナルがみつからない

とりあえず、熱。出すぎやろ。というわけで、昨日から寝込んでしまっていて、何も思うようにならない。なので速報だけ。受賞演説については、エルサレム・ポストの記事が一番詳しいとみなされているようで、ガーディアンの記事もそれに準拠している。全体と…

5. ナラティヴへの政治

1993年のオスロ協定で暫定自治が合意され、西岸とガザがパレスチナ人の手に戻されたことになった後も、基本的な状況に変化はなかった。96年の時点で、サイードはこう書いている。 オスロ合意後の西岸の地理は、頭がおかしくなるほどに複雑であるが、三つの地…

4.郷土の不足とナショナリズム・ワンダーランド

パレスチナが足りない 日本のメディアではパレスチナ問題と旧ユーゴ紛争は、ともに『民族問題』と『宗教問題』として語られることが多い。いや、この表現は正確ではない。『民族』『宗教』という言葉が口にされた瞬間から、日本人の多くは思考停止に陥ってし…

3. ハルキシステム再訪

もちろん、実際に村上春樹が何を考えているのかはわからない。また、僕が手に入れることができる資料やそれを読む能力にも限りがある(すごくある)。それを深く書き始めると大変なことになるので省略するが、ここに書かれているのは、僕が感じたことであり…

2. 良い歌だ。世界もまだ捨てたものではない

村上春樹と政治というとり合わせ。ずいぶん奇妙なものだと誰でも思う。けれど、僕にはその可能性があると思う。もちろん、それは集団の関係を直接操作するというようなタイプのものではない。正義を実現するものであるのかどうかすら疑わしい。だが、だから…

1. 村上春樹を理解してもガザの人々を救えるわけではない

システムということについて考えたい。たとえば、ガザ侵攻の問題に深くコミットしている人たちが、村上春樹の作品を全く読まないまま、エルサレム賞のボイコットを呼びかけたり、それに賛同しない人たちを批判するということがあるとしよう。そのように極端…

0. 村上春樹的な政治

島宇宙的だ。そう思う。そうなのだ、世界が水鳥の羽音で満たされ、大地は十六羽のウズラとその下で翼を広げる四羽のハイイロガンに支えられ、その全てが巨大な白鳥の背中に乗り、ってそれは鳥宇宙。島宇宙の話であった。ひとつの島のように完結した領域で人…

パレスチナとイスラエル

近所の公立図書館を荒らしてきた。その成果の一冊。 「パレスチナとイスラエル」、ダヴィッド マクドワル、奥田 暁子訳、三一書房 これはすごい。原著が出たのが1989年なので、オスロ合意とパレスチナ自治政府成立以降の重要な部分がフォローされていないの…

すみません、こちらに移動しました。http://d.hatena.ne.jp/le-matin/20090203/p2

パレスチナ側から見る

前の記事の一部にしようかと思っていたのだけど、こっちに。パレスチナについてのスタディーをしている、というようなことを数日前に書いたのだけど、もちろん、通りいっぺんのことは知っているつもりだった。で、今回はそれを越えるようなものを探していた…

ギヴ・ピース・ア・チャンス

冷静になるように努めている。というか、冷静でない状態になる理由はない。自分が攻撃されたわけではないし、友人や知人がそうなったわけでもない。ただ、悲しみのようなものがある。 自分の信念を披瀝しただけなのに、高圧的な押し付けをしているとか、自己…

たぶん、僕は「運動」に向いていない

さっきの記事を書いてからもいろいろとググっていて、ハアレツの記事をあと2本発見した。 Gaza op may be squeezing Hamas, but it's destroying Israel's soul 09.1.27 Someone must stop Israel's rampant madness in Gaza 09.1.26 どちらも別々の記者によ…

ハアレツ紙のひとつの側面

そろそろ本当にパレスチナ側の資料を集めようと思いつつ。検索していると、ガザで取材をしている唯一のイスラエル人記者という人がいる。その人、アミラ・ハス記者はもちろんイスラエル軍・政府に対して批判的で、そういう趣旨の記事をいっぱい書いている。…

「ガザ」についてのエッセイ

リンクを辿っていて、ちょっと興味深いエッセイを見付けた。原文は09年1月7日にロスアンジェルス・タイムズに掲載された英文なので、ほとんどの人には読めると思うのだけど、時間がかかる…ということで忌避する人がいるかもしれない。版権の問題などがあるの…

村上春樹を愛するみなさん、ちゃんと寝ていますか?

戦死するなら図書館の前がいい、とずっと思ってきた。そんなことを考えるのはアシモフの『銀河帝国興亡史』の影響なのだけど、図書館防衛軍に加わり、反知性主義的な敵軍と戦うというのは僕にとってのロマンのひとつである。 それとも、その場に至ったらため…

イスラエルに住んでいる人の日記

さっき、エルサレムのブックフェアについて検索していて見付けた。すごく複雑な気分になる。すごくすごく。この女性のバックグラウンドについては良くわからない。どうやらイスラエルの大学で日本語を教えている人らしく、徴兵されて軍隊にいる息子さんと、…

エルサレム賞に関してもう少し

ところで、僕はエルサレム賞に関して、何を知っているだろう? それがイスラエル最大の文学賞であり、イスラエルの有力新聞とかが噛んでいて、エルサレム市長とかも列席する中で授与されるということだけだ。言うまでもなくエルサレムはパレスチナとイスラエ…

トラックバックありがとうございます

すごく高いレベルでの考察を公開されている記事からトラックバックを貰ったので、いったいどこで言及してくれてるんだろうと思って嬉々として読んでみたら、「臆することなく無視すべき低レベルなやりとり」の例として引用してもらっているのだった。えーと…

春樹イスラエル再話

もう随分昔に読んだので出典をすっかり忘れてしまったのだけど、田辺聖子がある女性について憤慨を込めて書いていたことがある。定年退職することになったその女性へのプレゼントを相談されたので大胆な案を提示したところ、相談してきた若い男性たちが「い…

村上春樹さんがエルサレム賞を受賞

正直なところ、僕は最近ではあまり熱心な村上春樹読者ではない。とはいえ、ご多分に漏れず、若いころは相当熱心に読んだ。で、当たり前だが、彼はこの時期にイスラエルの文学賞を受けることの意味を(まして授賞式に出席すると公言することの意味を)考えて…

{瞬感]パンデミックの前に、僕らは日常を生きねばならない

なぜ日記の更新頻度が上っているのかというと採点が嫌だからなのだが(しかも今日は表のブログにも長文を書いてしまったのだ。嗚呼!)、まあそれはともかく。 どうも新型インフルエンザ対策という奴が気になるのだ。いや、話はわかる。専門的素養がないから…

28年ぶりの再会

やっぱりすごいなあ、と思う。 この本を何度も何度も激しく読んでいた10-12歳のときに感じていた気持を、また思い出すことができる。手に取るようにできる。そして、いくつかのシーンや登場人物の台詞は、まだ鮮明に覚えている。ローズマリ・サトクリフは、…

オバマ就任演説

わりと頑張ってレビュー書いたんだけど、Operaがフリーズして飛んだのでやんなった。なので簡略版。 いかにもアメリカの中道左派が言いそうなことだと思った。プラグマティズム(政府がでかかろうが小さかろうが、市場だろうが規制だろうが関係ない、要は結…

理由はないんだと思う、簡略版

ああ、駄目だ駄目だ。これではかえってわかりにくい!ってことでこの記事の簡略版。「はてサの皆様に質問がございます。」http://anond.hatelabo.jp/20090107103438 皆様なりの思うところがあり、弱者保護の拡充、体制の変革を求めていらっしゃるのでしょう…

理由はないんだと思う

これ↓に答えるとはてな左翼ということになるのだろうか、とおののきつつ。 はてサの皆様に質問がございます。http://anond.hatelabo.jp/20090107103438 皆様なりの思うところがあり、弱者保護の拡充、体制の変革を求めていらっしゃるのでしょう。では、その…

本当にメモ

図書館で借りた本。そのうち買う。葬祭の日本史 講談社現代新書作者: 高橋繁行出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/06/21メディア: 新書購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (16件) を見るお葬式の話よりも、念仏講の話が面白い。火葬場と差別問…

派遣村批判とか

派遣村批判とかを見ていると、権威主義的パーソナリティの概念を思い出す。といって、あの単純化された9項目か何だかの話ではない。あれだと多義的に解釈できてしまう。オリジナルの概念を良く紹介するものとして、グーグル2枚目より手前では、たとえばこれ。…

やっぱり革命では?

左翼のマンガ批評家さんが資本論の漫画版に悩む。 don-truste2bad@k.vodafone.ne.jp それはおそらく、たとえ解説書であっても『資本論』の内容にふれたとき、常識を覆してしまう爽快感があるんだけども、この本にはそれがない、とぼくは思うのだ。「常識を覆…