維新の政策を読んでみた

日本維新の会の政策集、「日本大改革:経済成長と格差解消を実現するグレートリセット」を読んでみました(広告代理店の手が入ってるらしい、なかなか上手いタイトルだと思います)。
日本の危機のところ

この政策集(というかパワポのスライドです)は、三部構成になっているのですが、全体として「今の日本は危機」「こう改革する」という話になっています(急いでつくったのか、内部学習会の資料みたいな「今後の維新はこうあるべき」というパートも混ざっています)。
まず日本の危機についてみると「経済成長がなく、諸外国に比べて所得落ちていること」「企業の内部留保が多過ぎ、労働分配率が低いこと」「貧困」「少子・高齢化」「教育費の高騰」を挙げていて、まあ普通に社会派です(ちょっと意外)。

税制改革のところ
メインの改革は、「税制改革」「社会保障改革」「労働市場改革」の三つからなります。
税制改革は、減税と制度の簡素化。法人税と消費税を減税し、所得税は10%と30%の二つの税率にします。分離課税や所得控除は全廃します。
金融所得にも普通に課税するために今の逆進性は改善されるのですが、累進課税に触れていないところが根本的にアカン感じがします。所得控除も、障害者控除や寡婦控除などもなくなってしまいます。基礎控除、給与所得控除もなくなるので、ほとんどの人にとっては増税になります。
そして、この結果税収がいくらになるのか、という話は出ていません。たぶん大規模な行政の削減をやらないと無理、な数字になると思うんですが、そこは触れないことにしたみたいです。
ベーシックインカム」のところ
二つ目はベーシックインカムです。これは全国民に月額6万円を支給するというもので(外国籍の方にはどうするのかは触れていません)、その代わりに年金などの社会保障の現金給付を全廃します。
6万円というのは、高齢基礎年金よりもちょっと安い金額なので、それを意識していることは間違いありません。高齢者などには10万円まで増額する、と言っているのですが、予算規模から言って増額は少数の例外に留まりそうです。
年金の2階部分などは継続するというプランなので、その部分を見れば、今の年金制度と違いはありません(医療保険などは継続します。障害年金には触れていません)。
維新のプランでは、この給付がさきほどの増税を相殺します。例にも挙げられているのですが、年収300万円の単身者の場合、所得税額は今の約5万円から30万円に一気に上がります。でも、年額72万円の給付があるので、差し引き42万円ほどがメリットになるわけです。
ただ、「プラン」はこの財源に一切触れていません。ベーシックインカムは100兆円の予算でできる、となっているのですが、これはほぼ日本の国家予算に相当する額です。増税によって賄うのかとも思いますが、それができるという計算は示されていません。
労働市場改革のところ
三番目の労働市場改革は、解雇規制の緩和と再就職支援、雇用保険の強化、労働分配率での法人税の優遇などからなります(「働き方改革」を言い換えるキャッチコピーが用意できなかったみたいです)。
解雇しやすくする代わりに再就職を支援する…というのは北欧型の社会民主主義政策のようにも見えますが、不吉なのは「失業者への権利と義務を課す」という(ちょっと文法的にも不安定な)文言が入っていることです。「福祉を撤廃して勤労を促す」というワークフェアアメリカの貧困層の生活をさんざんなものにしたあれの雰囲気がします。このパートはかなり短いので、拾えるのはこれくらいです。

まとめ

まとめます。労働市場改革の所でも触れましたが、このプランは、全体としてアメリカやイギリスの新自由主義改革と似ています。税制の簡素化や福祉の簡略化、解雇規制の緩和など、いずれも1980年代に登場した「サッチャリズム」や「レーガノミクス」の焼き直しです。したがって、当然のことながらこれによって格差が拡大し、富裕層と大企業だけが肥え太るという社会の到来が予測されます。
そして、このプランのもう一つの大きな問題点は、財政の見通しがないことです。税制にせよ、BIにせよ、どのくらいの財源が生み出されたり、必要になったりするのか、という観点が全くありません。もし維新が政権を取ったら、「再検討の結果、BIは不可能。増税だけする」ということになりそうな気が、僕はします。