村上春樹さんがエルサレム賞を受賞

正直なところ、僕は最近ではあまり熱心な村上春樹読者ではない。とはいえ、ご多分に漏れず、若いころは相当熱心に読んだ。

で、当たり前だが、彼はこの時期にイスラエル文学賞を受けることの意味を(まして授賞式に出席すると公言することの意味を)考えていないはずはない、と思う。実際のところ、彼は政治的な発言をしまくっているし*1、賞を辞退するとか授賞式を欠席するとかいうようなことを躊躇うタイプではない。
だから、彼は「政治的行動として」エルサレムに行くはずである。もちろん、ここにあるようなソンダク風の発言をするとは思わない。http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20090125/p1
だからと言って、唯唯諾諾と反対側の連中に利用されることを容認したりもしないはずだ。繰返すが、最も非政治的であるために、全てが政治的であることをあれほど理解している人もいない。

ある意味で最も愚劣なのはこの記事にあるようにボイコットを呼びかけたり、下に引用するような発言をしてしまうことだ。

日本人で、普段、政治的
発言をほとんどしたことのない村上が、そのような
イスラエル批判の発言をするか????ですね。

いずれにせよ、村上春樹に圧力をかける場合は、や
はり一般の人の目にも触れるような形で、メディア
に取り上げてもらえる形にしたいですね。

村上春樹に期待するところは
全くありません。政治的な発言は、前便の通り何度も聞いています。
左翼嫌いの輩です。

八鍬さんが提唱されたように、作品のボイコットの方が彼に
対する攻撃として有効であると考えます。他に更に有効な方法が
ないものか、考えます。

あるいは、最初にリンクした記事にも次のような記述がある。

村上春樹が受賞を受けるのかどうか、受けるとして、どんなスピーチをするのか、注目です。

 ある意味チャンスですよ、村上さん。事と次第によっては、こちらのリスト(引用者注:ボイコットを呼びかけるためのイスラエル協力者のリスト)に載ることになるのでしょう。


彼らは多分、村上春樹をしっかりと読んだことがないのだろう。もちろん、70年代の記憶をきちんと骨肉化したこともない。そういうのはもうとっくの昔に済ませたはずのことじゃないか。
別に、今さら蒸し返すのが悪いというわけではないし、僕だってその現場にいたわけではないが、一応左翼のつもりの人間として、人に記憶と反省の能力を期待してしまう者として、あのストックフレーズが頭を横切る。


「やれやれ」。


【後日付記】続きを書いた。これ。http://d.hatena.ne.jp/le-matin/20090128/p1

*1:個人的なことは政治的であり、個人的であるためには政治闘争を避けられない、という意味合いを含めて。