2.アウトロー社会史本

もちろん、これは包括的なリストではない。というか、今回はシステマティックな文献検索はしていない。あと「社会史」ということで、主に現代を扱ったものは入れなかった。以上をお断りしたうえで、今回読んだ本を軽く紹介。 猪野健治1999-2011 『やくざと日…

1.はじめに:「なぜアウトローなのか」

日本の「アウトロー」と呼ばれる界隈について、調べたり喋ったりしている。といって、現実のそういう世界に興味があるというわけでは必ずしもない。そもそもの発端は左翼の将来について考えていて、そこでなんだかもやもやしたことだった。しっかり調べたわ…

ソウルにおける日本、のようなことなど

ソウルにまた行ってきた。実は、僕はここ何年も韓国に行き続けていて、初めて行った2006年以来、この7年で7回目の渡航になる。なぜそんなに何回もいくのか?僕は特に韓国のどこが好き、というわけではない。タレントさんとかでも特にファンはいない(「イ・…

やっぱり今のポルノは問題があると思う

昨日から会田誠の作品展への抗議について考えている。主に表現の自由という観点からあれこれ書いているのだが、それだけでよいのか、という問題は残る。確認しておくと、僕は表現は基本的に自由であると考えていて、それが大規模に流通するような場合に、公…

文楽:忠臣蔵の感想

11月に文楽:忠臣蔵の通しを見にいった時の感想。フェイスブックより転載。======昨日の文楽でとても印象に残ったのは、「嘘のつき方」の細やかさだ。文楽はもちろん、人間が人形を操り(また別な一人の人間が全てのセリフを発声して)表現しているわ…

レ・ミゼラブル映画版の感想

「レ・ミゼラブル」の映画版を見てきた。ツイッターで書いたのとほぼ同じなんだけど、一応まとめて転載。僕は「レ・ミゼラブル」のミュージカルの大ファンで、たぶん9回くらい見ている(小説も読んだ)。それが映画化されるということでちょっと心配と、ミ…

左派ってこれからどうするのか

選挙の前後に「左派(左翼)のこれから」についていろいろツイートしていた。ちょっといじったら一つの文章になりそうだったので、まとめ。 8−90年代の個人主義(というか、反集団主義)的なムーブメントが共同体主義をへて排外的なナショナリズムにつな…

文楽みてきた

(11月10日に大阪の国立文楽劇場(大阪市立でないことは強調しておきたい)で、「仮名手本忠臣蔵」を見たときの感想。フェイスブックに書いていたのだけど、こちらにも転載)昨日の文楽でとても印象に残ったのは、「嘘のつき方」の細やかさだ。文楽はもちろ…

環境と分断

環境問題と市民の連帯 ついこの間であり、無限に遠い過去でもある今年の3月上旬まで、僕にとって環境問題は人々を連帯させる魔法のキーワードだった。もちろん、現実世界では様々な利害関係とか成長によって解決される問題とかがあってそう簡単にはいかない…

リスクに支配される社会(試論)

突然、僕らはリスク社会の姿を知ることになった。地震に理性を揺さぶられ、津波に心から怯え、被災された方々とともに寒さに震え、生存者の救出を信じ、把握できないほどの数の物故者の冥福を祈ろうとする間にも、そいつが襲いかかってきた。 それは、今まで…

一年後にエルサレム賞がらみのことなど

一年というよりはもうちょっと経っている、というのが僕の実感なのだけど、振り返りの記事を書いておられたので、色々思い出して。僕はこの件に関して、何本かの記事を書いた。メインに位置付けていたのは、 この記事「春樹イスラエル再話」と、 この記事か…

スポーツって芸術の一種だと思う

スポーツは芸術の一種だと僕は思っている。絵をみて「すげなあ、上手いなあ」と思う。焼き物の歴史を知って「そうか、そういう風に技術が発展するんだ」と思う。小説を読んで「うわあ、どうやってそんな風に発想するんだ。俺には書けないわ」と思う。そうい…

リアル天皇制

今話題のバンクーバーオリンピックの男子スノーボード代表、国母選手について考えていたら(もちろん、彼が服装について激しく批判されている件のことだ)、あるブログ記事へのコメントで、「たとえば天皇陛下の前にあの格好で出るのをあなたは許せるんです…

歌ってやれよ、君が代くらい

正月休みに、村上龍の『半島を出よ』と森巣博の『越境者的ニッポン』を読む。そして、ああだるい、と思う。たとえば、村上龍はこの小説のなかで、日本のある都市の理想の姿を次のように書く。 「アジア千年の知恵」と題して、アジアからの留学生を***1の市…

「プロ倫」とか、ウェーバーとか

マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」がトンデモ本だという話が新書で出て、一部で話題になっているとのこと(こことか。大元の学術書は02年に出ているらしい。そういえばちょっと見た気が)。まあ、僕は一応社会学をやって…

科学関係の予算について

もし、本当に効率の良いお金の使い方をしたいのなら、政府は欧米の学者の研究に巨額の補助を出すべきだと思う。 彼らは英語、フランス語、ドイツ語などの国際科学の公用語を自由に使いこなして研究発表ができるし、日本にはない世界トップレベルの教育機関で…

ナクバ法とか

イスラエルで、ナクバ法というものが可決・成立しかかっているらしい。ナクバとは、とか僕が書くより、このブログを引用したほうが早い。 「イスラエルの迷走ーナクバ法」Bananian Blue 先月、「ナクバ」を追悼する者を処罰するという法案がだされ、現在1回…

真犯人はどこにいるのか

足利事件、冤罪だった受刑者が釈放 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090604k0000e040084000c.htmlやりなおしDNA鑑定の結果が出た時点でこれは無罪でしょ、と思ったのでその点の驚きはない。びっくりしたのは釈放するかどうかは検察が決めるんだ、と…

そりゃ詐欺じぇねえか?水道水販売

うちは毎日新聞なのだけど、昨日の夕刊(大阪本社版)の2面に、ちょっと妙というか、何とも興味深い記事が載っていた(おそらくこのコラムはネットにはアップされていない)。「ボトル入り水道水の"秘密"」というタイトルで、書いているのは阪大教授の那須正夫…

リスクってこと

某所に書いたものなんですが、ちょっと焼き直して再掲。いろいろ誤解があるような気がするので。今回のインフルエンザとその対策について、かなりまずい認識が広がっているような気が僕はしている。それというのは「行政の対策は私が感染しないための支援で…

冷静にやったほうがいい

というわけで新型インフルエンザ。僕の顧客である大学もいくつか休校になり、とんだ連休である。もちろん、既存症を持っている人にはリスクがあるし、かなり低いとはいえ死亡に至る確率もあり、そうでなくても仕事や学業に支障があったり、熱が出て苦しかっ…

合理的なひどいこと

今朝テレビを見ていたら、エジプトで養豚業者が警官隊と衝突、というニュースをやっていた。かの地では、政府が新型インフルエンザ対策として、念の為に国内で飼育されている豚を全部殺処分するという決定をくだしていて、これに業者が抗議しているのだそう…

文系の社会科学者にとっての福音、なのかも

手元にあるデータを教科書にある数式に片っぱしからブチ込み、何らかの規則性を示す結果が出たらそれを解釈すればいい…、というのは文科系の素地を持つ社会科学の学生が一度は考え、そして挫折するアイデアではないかと思う。数学的素養が薄いにもかかわらず…

日韓の比較社会学って面白いかも

NHK-BSでやっていた地球特派員2009 <終>「非正規雇用50%の衝撃〜韓国・苦悩する格差大国〜」ビデオに録っていたのをようやく見る。番組の問題意識とはちょっと違うのだが、見ていて思ったのは日本と韓国がいかによく似ているかである。考えてみれば…

できるかぎり大阪府立大学は避けたい

今、NHK大阪のニュースで映像を確認しただけなのだが、大阪府の橋下知事が府立大の入学式に出席して、「府の金を出す価値があるかどうか、君達を厳しく監視させていただく」と学生に語ったらしい(検索したのだが、webにはソースがないみたいだ)。正直、こ…

イスラエルのアラブ系プロサッカークラブ

撮っていたビデオをようやく。イスラエルの一部リーグに所属するアラブ系のプロサッカークラブ「ブネイ・サフニン」の話。この番組だ。*1。イスラエルにプロリーグがあるのは知っていたけど、そこにアラブ人主体*2のクラブがあることにまず驚いた。それから…

知らないから勉強します、について

以下、単なる個人的偏見なので、「俺の意見は違う」という人にはあらかじめ謝っておく。すみません。というわけで好きなことを書くが、またしても表題のようなことを書いて、歴史修正主義について語っている人がいるらしい。で、それについてこの記事「“単に…

似てるな、というだけ

ちょっと興味をひかれて長谷川四郎の短編を読む。そして、この人は実に村上春樹だと思う。たとえば、連作短編「シベリヤ物語」の冒頭のくだり。 汽車で通過してしまう人にはちょっとわからないかもしれないけれど、徒歩か馬車か或いはトラックで、周囲の高原…

テロは克服できる

『ニューズウィーク日本語版』2009.3.11号の記事「忘れ去られた暴力の嵐」がなかなかいい(58-9ページ)。こう始まる。 ウォール街を南へ進んでいた一台の馬車がJPモルガン商会の正面で止まり、爆発したのは1920年9月のある朝のことだった。 イタリア人無政…

7. 個人の側につく

これで終り、とか言っておきながら、昨日はぜんぜん終らなかった。まあ、もうちょっと。ところで、まだエルサレム・ポストをチェックしている人はいるのだろうか?昨日の電子版の記事のひとつは、イスラエル空軍機がガザのエジプト国境近くにあるハマスの基…