0. 村上春樹的な政治

島宇宙的だ。そう思う。

そうなのだ、世界が水鳥の羽音で満たされ、大地は十六羽のウズラとその下で翼を広げる四羽のハイイロガンに支えられ、その全てが巨大な白鳥の背中に乗り、ってそれは鳥宇宙。

島宇宙の話であった。ひとつの島のように完結した領域で人々が満足し、その外に出ない。そういう領域がたくさんあるという状態だ。今回のことで、我々の世界がそうなっていることを痛感した。

たとえば、エルサレム賞のボイコットを呼びかける人が、まず村上春樹を読んでみるべきだ、という契機が見出せない。一方、村上春樹ファンの人はパレスチナ問題にコミットすべきだという理由もない*1

とはいえ、それが間違っているとか、矛盾だとか言いたいわけではない。そんなに単細胞ではないつもりだ。我々の社会は、そうとしかなりようがない。それを事実として認めた上で、村上春樹的なものが好きであるということと、現実の状況への対応ということを考えたい。連載(というか連投)形式で、エルサレム賞の件をもちろん中心にして。

ブログの記事というのは基本的に「一話完結」でなければならないという気持はあって、こういう形を取るのには若干の抵抗がないではない。ただ、この記事に関してはそう簡単には終わりそうもないので、まとめると可読性に非常な問題が生じる。なので、ちょっとづづ区切ることにした。たぶん5、6回くらいで終ると思う。最初から順に読んでもらえると大変にありがたい。

*1:個人としてやってみる人はもちろんいるだろう。でもやらなくても全く支障はない