ロシア軍とマイノリティ兵士(連続ツイートの仮訳)

ロシアの反体制派で、民族的マイノリティの問題を扱っている近代史学者の人が今回の戦争とロシア軍の状態について連続ツイートしておられたので、ざっと訳した。ロシア軍は人口比よりも大幅に多くマイノリティの兵士を使っていて、しかもこの侵攻はロシア民族主義に基づいて行われている。兵士にとっては何重にも割に合わない、という話。こういう視点はこれまでになかったと思う。

連続ツイートのリンクはこちら:

https://twitter.com/kamilkazani/status/1506479259866394625

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ウクライナ戦争でのロシア軍のマイノリティの要素はたいへんに過小評価されてる。第一に、そこではマイノリティは少数派じゃない。負傷者リストから判断すると、マイノリティは弾除けとして戦場に大量に存在してる(続く)」
「ロシア軍全体のデータは集約できない。でもロストフの病院にいるロシアの負傷兵のデータからウクライナで誰が闘っているのか考えることはできる。半分以上があきらかにダゲスタン人だ。負傷者リストに一番多いのは、モグメド(ムハンマド)という名前」
「これは意味が分かる。ほぼすべてのロシアの地方で出生率が高いのは民族共和国か民族自治区だ。コーカサス人とシベリア先住民が徴兵可能な男性を産みだしている。更に彼らはだいたい貧しいので、軍隊に誘惑されやすい」
「これは地方レベルで見ると国全般に言える。社会人類学者の@TBaktemirが研究したアストラハン管区について考える。
沢山の民族集団が複雑な人種的ヒエラルキーの中にいる。その67.6%がロシア人、14.8%がカザフ人だ」
「アストラハン管区当局はウクライナで7人が戦死したことを確認している。
Arman Narynbaev
Ali Batyrov
Temirlan Jasagulov
Rysbek Nurpeysov
Anwar Irkaliev
Aynur Nurmakov
Alexander Bezusov
6人がカザフ人で、1人がロシア人。人口の14%のカザフ人が、犠牲者の85%を占めている。ロシア人は67%だけど犠牲者の14%だ」
「なぜか?答えは明らかだ。アストラハンではカザフ人は人種的ヒエラルキーの下位にいる。大部分は貧しい田舎の住人で、教育を受けておらず、現実的な社会移動のチャンスも全くない。この人たちは社会の階梯の市場下にいて、もちろん他の民族から見下されている」
「はっきりさせておきたいが、カザフ人がロシア全体で人種的ヒエラルキーの下位にいるといいたいわけではない。彼らは特定の地方で下位にいる。ここでは彼らは田舎者で、テュルク人やイスラム教徒などのほかの民族もこの人たちとの結婚を避ける。それは下方婚になる」
「アストラハンで恵まれない地位にいるカザフ人が、公式統計によれば、ウクライナでの軍事的犠牲のほぼすべてを占めているというのは興味深いことじゃないか?実際、これは意味がある。ロシア軍は貧しい人とマイノリティの軍隊だ。他に道がないのだ」
「どうやったらロシア軍に入れるか?そう、まず徴兵される必要がある。裕福な人たちはこの段階で除外される。社会的資本を持っている人たちは軍務を負け犬の運命だと思っている。だから、貧しいか素朴で、どうやって(あるいはなぜ)ごまかすかを知らない人が徴兵される」
「それから契約がある。彼らは説得し、恥じ入らせ、誘惑し、騙して契約させようとする。間違って徴兵された社会資本を持っている人は、あらゆる方法を使ってそれを避ける。弁護士や人権活動家に電話する。大抵は逃れられる」
「契約はふつう自発的なので(いつもそうではないが)、当局は地方の田舎者にすごく集中する。第一に、彼らにはプレッシャーをかけやすい。彼らは自分たちの権利を知らない。第二に、彼らは給与で買収しやすい。彼らにはどのみちキャリアはない」
「第三に、彼らは使い捨てにできる。モスクワのインテリの子どもたちが死ぬことを考えよう。それは頭が痛い。彼らの家族は弁護士やメディア、人権団体に電話してインタビューを受ける。地方の田舎者のお母さんは枕の上で泣くだけだ。素晴らしい!」
「これがロシア軍がどんどんマイノリティの軍隊になっていく理由だ。そう、ロシア軍はいつも民衆の軍隊だった。だけどかつては彼らはほとんどロシア民族だった。しかし今では地方にはロシア民族の若者はあまり残っていない」
「当局は中央アジアからの移民を強制徴募したいくらいに人材に飢えている。技術的には、この人たちは契約を拒んでどこにでも行くことができる。募集担当は怒鳴り、罵り、拳を机にたたきつけるだけだ。実際には彼は何もできない。だけど彼らはそれを知らない」
外国人労働者の徴集は絶望の契約だ。それは単に、彼らは入隊しなくてならないと説得し、そうしないと大変なことになると脅すことで行われる。法的な権利があるから大変なことにはならない。だけど彼らはそれを知らない」
「僕が亡命とサボタージュの働きかけを勧めるのはこれが理由だ。すぐにロシア軍はロシア帝国の神話を共有しない、たまたまそこに連れてこられた人たちで一杯になる。彼らのモチベーションはとても、とても低い」
「これは第二次世界大戦でもそうだった。こうした事例は「ソヴィエト人民の団結」の維持のために公表されなかったが、実際には中央アジアの部隊の士気は大変低く、彼らはロシア人よりも多くドイツに集団投降した。彼らはこれを自分たちの戦争だと思わなかったのだ」
「それはわかる。ウズベク人だと想像してみよう。あなたは自分がロシア人だと思うだろうか?もちろん思わない。共産主義を信じるか?そう、当局が命令するからすべての儀式をこなさなくてはならないが、深く内面化しているわけではない。僕はこのウズベキスタンでの富農撲滅運動の写真が好きだ」
「注:僕は普通のマイノリティの話をしているので、チェチェン人の話はしていない。チェチェンは違う。チェチェンはもっと封建的な王国で、普通の軍隊よりは治安部隊のような働きをするチェンチェン人部隊とロシアとの個人的なつながりがある。彼らは監視と統制のためにいて、闘うためではない。ストレルコフはそれを証明してる」
「カディロフは自らチェチェン人は闘わないということを否定しなくてはならない:
「私はしばしばチェチェン人が闘わない、第二列や第三列に行く、または民間人とともに記録を取っていて本当の闘いを避けている、と告発されているという話を読む」。
そして「本当の闘い」の映像を投稿する」
「正直言って、説得力があるとは言えない。彼の姿勢と筋肉からして、この死体は数時間以内に死んだ人のものだ。おそらくこのきれいでぱりっとしたチェチェン人は、カディロフがテレグラムに投稿できたチェチェン人の本当の闘いのだいぶん後にそこに来たのだろう」
「面白い話:ドンバスの軍隊の野戦指揮官であるホドルコフスキーはチェチェン人が本当の闘いを避けていると告発している。それでカディロフの取り巻きのデリムカノフが彼と「話」をした。もちろん、ホドルコフスキーはチェチェン人が絶対に闘って「Akhmad Sila!」と言っているとカメラの前で訂正した。カディロフの部隊は更に内務省軍に似ている。
「本当に戦うチェチェン人はいるが、ロシア側にではない。これはイチケリア移民からなるシェイク・マンスール大隊で、ウクライナのために闘っている。カディロフの動画との違いに注意。これは本物の兵士で、カディロフの治安&PR部隊ではない」
「Z侵攻では、(チェチェン人でない)マイノリティがロシアの民族主義者のために闘って死ぬ。この人たちは何を得るだろう?まあ、同化。このポスターに注目。これは「私はウェールズ人だが、今はみんなイギリス人だ」的なもの。アイデンティティを捨てる人は祝福される」
「マイノリティの立場からすれば、Z侵攻は取引の歴史の中でも最悪の取引みたいなものだ。人々は戦争の不均衡な重みに耐え、多くの犠牲を出す。もしZ侵攻が成功したら、人々は同化を強要され、自治権を失うことになる」
「Z侵攻はだいたいロシアの民族主義者の暴走だ。ウクライナでの成功を許せば、ロシアのマイノリティが次の標的に選ばれるのは明らかだ。簡単に予想できることだ。なぜこの人たちは協力するのか?それが今日話したかったことだ」