科学関係の予算について

もし、本当に効率の良いお金の使い方をしたいのなら、政府は欧米の学者の研究に巨額の補助を出すべきだと思う。
彼らは英語、フランス語、ドイツ語などの国際科学の公用語を自由に使いこなして研究発表ができるし、日本にはない世界トップレベルの教育機関でのトレーニングを受け、(これまた日本にはない)世界最高レベルの研究機関で仕事ができる。世界レベルでいえば、評価されるのはほぼ彼らだけだ。特に僕がいる社会科学の分野などではそうで、国際的には日本の研究者の存在感などは事実上ゼロだと言ってもよい(世界的に尊敬される日本の学者はいないし、日本発の有名な理論もない)。
欧米の研究者を支援すれば、評価される研究結果があっという間に出るし、世界中から感謝されるだろう。もちろん、日本の研究水準が向上しなかったり、日本社会の理解が進まなかったりというような副作用はあるかもしれないが、もともと日本の学会は国際的に注目されていないから同じだし、日本社会の研究に興味を持つのは日本に住む人だけなので、世界的にはさほどの損失はない。それに対して、資金の存在感は圧倒的だ。ものすごく効率のいい投資になる。

上はもちろん、半分冗談だけど、あながち全く実感していないことでもない。学会の主流と言語を共有せず、また、極東のマイナーな島国をフィールドにしているという点で、日本の人文、社会系の研究者は決定的なハンディキャップを負っているのだ。本気でこの分野に費用対効果みたいな下らない概念を持ち込みたいのなら、

  1. 国際交流に予算をつぎ込んで、本気で世界の一流を目指す、
  2. 日本国内の需要に特化して、社会の中で活用できるように考える、
  3. もう日本では無理、と考えて最低限の教育と翻訳だけをやる、

のどれかを選択するしかないと思う。まあ、どれもナンセンスだから、つまるとこは現状維持に近い形になるのではないかと思うのだけど。