マジョリティとヘイトスピーチ
某所で話したレジュメを一部編集して公開します。
1.ヘイトスピーチの定義
・「憎悪に基づく表現」一般のことではない
・ 「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道」(自由権規約)
・ 人種とは…「人種、皮膚の色、出自又は民族的若しくは種族的出身」(人種差別撤廃条約)
・ 典型的には社会的少数者に向けられるもの(一般的勧告35)
・ ジェンダーやセックスも視野に入れるべき
2.ヘイトスピーチはなぜいけないか
・ 標的となったマイノリティの精神を傷つけ、生活や社会参加を妨害する…不安、社会への不信、PTSD、ネットや地域社会への参加の妨害
・ ヘイトクライムへの発展…究極的には、ジェノサイド
・ 一言で言えば、人権の侵害である
・ しかし、マジョリティは被害者の存在を忘れ、加害者に対処することに注目しがちである
3.差別に反対するマジョリティは、二つの態度を両立させなければならない
・ ヘイトスピーチに反対するのは、特別なことではない…社会の一員として当然のこと
・ ヘイトスピーチに反対するのは、特別なことである…マジョリティが自己変革する覚悟なしでは何も解決しない
・ 「トラブルを起こさないマイノリティ」「差別的でないマジョリティ」は存在しない→「ただヘイトスピーチに反対するだけ」は不可能
4.反差別と差別の三形態
a.差別の形態: 序列化
・ 言い換えると…「見下し」(侮蔑・蔑視)
・ 反差別の現場でマジョリティがしそうな序列化…「マイノリティを差別から守る」
・ 反差別の現場でありそうな差別…「マイノリティはかわいそう」/「マイノリティは大袈裟だ」
・ マジョリティが心得るべきこと…差別があることを認める。自分たちが不当な利益を得ていることを認識する
b. 差異化
・ 言い換えると…「遠ざけ」(忌避・排除)
・ 反差別の現場でマジョリティがしそうな差異化…「同じ社会の一員として差別に反対する」
・ 反差別の現場でありそうな差別…「マイノリティのことをわかれない」/「マイノリティとは一緒にやれない」
・ マジョリティが心得るべきこと…わからないと決めつけない。一緒にやることを諦めない
c. 同化強制
・ 言い換えると…「違いの無視」(伝統・文化・アイデンティティの否定)
・ 反差別の現場でマジョリティがしそうな同化強制…「我々と同じなのに差別されているのは許せない」
・ 反差別の現場でありそうな差別…「我々は同じだ」/「マイノリティは違うと言いすぎる」
・ マジョリティが心得るべきこと…違いを認める。多様性が正常であることを認識する
5.マジョリティの三つの原則
・ 見下さない…自分たちが不当な利益を得ていることを認識する
・ 遠ざけない…一緒にやることを諦めない
・ 違いを認める…多様性が正常であると考える
6.マイノリティファースト
・ 「それは逆差別ではないか」という反発はかならずある
・ だが、これ(上記三原則)くらいやって、ようやく差別が若干解消されるにすぎない
・ マジョリティは「自然に」多くのメリットを得ている
7.めざすべき社会
・ 平等と多様性の両立
・ アイデンティティと柔軟性の両立
・ 一足飛びの解決策はない。ひとつひとつ問題を解決していくしかない