今後の大学

さて、関係者以外はほとんど誰も知らないことだが、今、全国の短大や非有名系四大の経営を支えているのは保育・幼児教育系の学部学科である。保育士や幼稚園教諭になりたい、という学生がどんどんやってきていて、そういう学部・学科だけ(ではないが印象として)が盛況を極めているわけだ。
既存の学部もどんどん看板を掛け変えているし、「子どもナントカ」という学部の新設もすごく多い。


少子化だっていうのに何を考えているんだろう、と思わないでもないのだが、政府が待機児童の解消やら幼保一元化やらに力を入れているのは確かで、短期的には需要が確かにあるのだった。そして、こういう短期需要に地方の大学や短大が振りまわされるのも良くわかる話である。大体において、高校生たちは長期的展望ではなく、今話題になっていることに基いて進学先を選ぶからだ。というのは、考えてもごらんなされ、あなたが今18才だとして、二年後か四年後、はたまた10年後に社会がどうなっているか、自分がどうなっているか、なりたいかというようなことを予測できるだろうか。無理というものである。

もちろん、常にロングレンジの展望を持っている親や若者がいるにはいるのだが、そういう人は名の知れた大学のオーソドックスな学部を選び、そこの需要と供給にすっぽりと収まる。結果として、それ以外の高等教育機関は話題性に基づいた選択に対応せざるを得ないわけだ。


で、問題は、僕自身がその選択の結果として産み出されたニッチェ的な学部の、更に隙間的な半端仕事で食っているということなのだった。看板を掛け変えても人は入れ変えたくないから(当たり前だ、教員の雇用を守るために路線を変更するのだから)、極力従来の教員が授業をする。そうするとどうしてもカバーできない領域が出てきて、そこを埋めるために僕のような「大学フリーター」が時給いくらで呼ばれるのである。ということで、どうしても流行には敏感にならざるをえない。

今の子どもブームの前には福祉ブームがあった。その前は情報と国際が流行った。どれも3ー5年のスパンである。それ以前は僕がこの業界に来る前のことなので良くわからないのだが、心理ブームとか家族ブームとか、色々あったらしい(「学際」が叫ばれる前のことなので、ちょっと雰囲気は違ったと思う)。子どもブームも4年目くらいなのでそろそろ終りかけているはずなのだが、問題は次に何が来るかだ。


ざっと考えてみて、一つ来そうなのは医療である。医師不足、看護師不足は確かに言われているので、それは可能性がある。医師は大変だが、看護師、技師などは高校を出てからの進路変更でもいけるので、需要が高まるかもしれない。文系の需要ははっきり言って少なそうだが、家族・心理あたりがかろうじて引っ掛る。

もうひとつは環境だ。はっきりとした専門職がイメージしずらいという難点はあるが、エコ生活の指導員とか何とか、そういう方向があるかもしれない。政策過程論、生活論といったところか。

あとひとつあるとしたら人材系かもしれない。格差社会問題と呼応してキャリコンの需要は高まる(というか話題になる)ような気がする。となると、キャリア論、発達論、家族論あたりが問題になる。ただ、これは希望的観測に近いなあ。

いずれにせよ、1、2年でまた転機が来るはずだ。しっかり対応しないとな。